海(続き)

本当に海へ連れていってもらった。 彼の息子と3人で、朝早くに出て、海へ来てしまった。 強くうねる波のリズムは複雑で、今ここにいる3人の関係性を示唆してるみたいでいやらしい。 しかし思ったより海の水は冷たくなくて、ボディボードをやる彼と息子を横…

水着を買ってもらった。 海に行く予定もプールに行く約束もないのに買ってもらった。 試着室で着てみてあれこれ言われるのが少しだけ楽しみだったけどそんなことはなく、「これ」と選んだものを、彼は真っ直ぐレジに持って行った。 あんなに水着の試着楽しみ…

夜のおすそ分け

今日は疲れたからまっすぐ帰るよ、とメールが来た。 そうか、おやすみ。と返事をして、タバコに火をつけた。 途端に、夜が蒼暗くて寄る辺ないものになって、途方に暮れそうになる。 山猫とはいつも夜にばかり話をして、一緒にいた。 明るい陽の光の下は、私…

指環

誕生日に、指環を買ってもらった。 ホワイトゴールドの華奢な土台に、ダイヤが散りばめてある。 その指環は、私が強請って買ってもらったものだ。 去年の夏に、よその男の子と寝たことを山猫に打ち明けた。 そのとき、私はまだ彼の女ではなく、 肌を合わせて…

帰り道

寂しくて不安、と連絡したら、ビデオ通話を掛けてきてくれた。 「もうすぐお家着くよ」と、家の近くにある建物なんかを見せてくれた。 不安という病を持て余しているこんな夜に、これほど効く薬はなくて、今夜は安心して眠れるように思う。

絆創膏

夜中に突然、「包丁で指切った」などと連絡が来たので、あわてて絆創膏を持って会いに行った。 行くと呑気に刺身を食って、左手の指には血で真っ赤になったティッシュがぐるぐる巻き。 頼むよ、泥酔してる時に刃物持たないでくれよ。 もうすぐ夜も明けるであ…

おやすみなさい。

遅い時間まで2人、話をして、それぞれの家に帰った。 触れ合うだけのキスをして、おやすみなさい、って。 明日は一緒に映画を見る約束をした。観れるといいな。 たくさん、たくさん話をしたのに、今一緒にいないことが寂しいのは何故だろう。 今ここにいて、…

トランキライザー

その日は山猫の頼みで、とある会合に代理で出席した帰りだった。 いつも通りに店へゆき、酒と食事を頼んだ。 けれど喉を通らない。 どんどんと具合が悪くなってゆく。 結局、頼んだ食事を食べきれず、帰宅した。 理由はよくわからない。 疲れていたのかもし…

さくら

ふたりでお花見をしたいという話をしていた。 染井吉野でも、山桜でも、枝垂れでも、八重桜でもいい。 桜並木の下を、彼の運転する車で通過するだけでもいい。 お花見をしたい、と、お願いをしていた。 彼はいいよ、と言ってくれていたけれど、頼みながらも…

山猫と肌を合わせているときに、汗をかいた。 もうこんな季節なんだなと思う。 セックスの最中に汗をかいたことはなかった。 山猫としているときだけだ。 そういえば、私の家で初めて繋がったとき、空調が壊れていて、悪夢みたいに暑くて、彼は部屋を真っ暗…

約束

私はひどく弱いけど、山猫のためなら強くなれるはずだと、一所懸命に自分を信じる努力。 何があってもどうか、彼のことを憎まずにいられますように。 死ぬ寸前、最後に目を閉じる瞬間に心から、「山猫と出逢えてよかった」と想えるように。 人の道をはずれた…