指環

誕生日に、指環を買ってもらった。

ホワイトゴールドの華奢な土台に、ダイヤが散りばめてある。

その指環は、私が強請って買ってもらったものだ。

 

去年の夏に、よその男の子と寝たことを山猫に打ち明けた。

そのとき、私はまだ彼の女ではなく、

肌を合わせているとき、たびたび、「ほかの男と寝てもいいんだよ」と言われるような状況で、

そのときも、彼がそんなことを言うものだからつい、打ち明けてしまったのだ。

 

いつも飄々として、「お前は俺の女じゃない」「はやく彼氏をつくれ」などと言っていた山猫が、ひゅっと、豹変した。

そこから嵐のような数日を経て、私はやっと、彼の女になったのだ。

関係を持つようになってから、丸二年が経っていた。

その嵐の最中、何が欲しいかを聞かれた。

私は「山猫が欲しい」と即答し、「それは無理」と叩き落された。

だったら指環がほしい、私はひるまず食らいついたのだ。

本当にもらえなくても、別に良かった。

ただ、目に見える形で、彼の気持ちが欲しかった。

 

身体から始まった関係だから、身体しかないような気がして、

お互いの欲求が尽きて凪いでしまったとき、

もうそこには何もないような不安があって、

だから、どうしても、目に見えるものが欲しかったんだろう。

 

喧嘩をして外したり、突き返してゴミ箱に捨てられてしまったりもしたけど、

指環はいつも、私の右手の薬指に在る。

他の女の影がちらついたり、

ひとりぼっちで寄る辺なく眠れない夜も、

指環を見ているとほんの少しだけ安心するから、

指環をもらってよかったと、本当に思う。

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