水着を買ってもらった。

海に行く予定もプールに行く約束もないのに買ってもらった。

 

試着室で着てみてあれこれ言われるのが少しだけ楽しみだったけどそんなことはなく、「これ」と選んだものを、彼は真っ直ぐレジに持って行った。

あんなに水着の試着楽しみにしてたのにどうしたの?と聞いたら、奥さんにしかしたことないようなことをして、ひどく恥ずかしかったと言っていた。

こんなの、さぞや手馴れてるんだろうとばかり思っていたからびっくりして、でも照れてる顔がかなんだか可愛いかった。

 

白地に赤や青の淡い花柄の散ったビキニ。

 

こんな可愛いの選んじゃってどうしようと思いながら、後で着て見せたら「すっごく可愛い。買ってあげてよかった」と喜んでくれて、一安心した。

 

今年中に一回、海に連れていってやるから。

そう、彼は言った。

ボディボード教えてあげる。やったことないでしょ?

そう言って、海の遊び方をたくさん教えてくれる。

そうそう、日焼け止めもちゃんと塗ってあげるからね。

そう言ってわらう顔がいとおしかった。

 

明日のことさえ、どうなるかわからない。けど。

でもこうやって、未来の話が出来るのはすごくいい。嬉しい。

初めの頃はこんな風にどこかへ一緒に行く計画を立てられるなんて夢にも思ってなかった。

ふたりでできるのは夜にお酒を飲みながら話をして、体を重ねることだけだった。

それが今は、毎週のように昼にデートしたり、遊びに行く話をしてる。

ほんの少しずつでもこうやって、一緒に出来ることが増えていることが幸せだ。

 

海水浴は小学生の時に行ったのが最後で、もう、どんなものだったかもろくに覚えていない。

彼の愛する海はどんな姿をしてるだろう。

 

陽の光で煌めく波、素足で触れる砂浜の温度、空の青さ、水の冷たさ。

海についてはまっ白なままの私の心を埋められる日が楽しみだ。